心自体が心を苦しめているという考え方

「般若心経」は、人間の心のあり方について、それを究め、いかにして悟りにいたるかを解いた経典である。そして、いかにして心の中に苦が生み出されていくのかを示す一方で、その原因となっているものを全て空や無として否定することで、悟りへの道を示している。

ところが、私たちは、日常の暮らしを送る中で、すぐに何かに心をとらわれ、それに執着して、自己を失ってしまう。些細なことでも、気になることがあると、それが妨げになり、幸福を感じられない。それほど私たちの心は弱い。だからこそ教えを必要としているとも言える。

人間を苦しめる悪についても、悪魔のような存在を想定しない。心を苦しめるのは、心の外側に存在する悪魔などではなく、『心自体』だというのが基本的な立場である。外側にあるものなら打ち負かさなければならないが、心が心を防げているのなら、私たちは自分の心を見つめ直していかなければならない。あらゆるものが心から発しているという立場をとるからである。